ここあみるくのブログ

閲覧者様に上手く伝わるように努力した記事を伝えられたらと思います

「倒壊危険」と判定された我が家

 「危険」と大きく記された赤い紙。強い揺れでかなり傷んでいると判定された家屋の壁や玄関に張られている。危ないとされても、慣れ親しんだ我が家は離れがたく、避難所暮らしにも抵抗がある。地震から1カ月を迎える中、石川県内では壊れた自宅や車中泊で暮らす被災者らがいる。 明日発生1カ月 1月31日の被災地  大火が街をのみこんだ輪島市の「朝市通り」。輪島塗職人の奥田志郎さん(76)は1月23日、自宅の1階で散乱した湯飲みや家具の片付けをしていた。  木造2階建ての工房兼住居のそばまで猛火が襲ってきた。最大震度6強の揺れで2階部分はひしゃげ、1階はかろうじて原形をとどめている。その玄関には「危険」の張り紙があった。  漆器店の3代目。先代の兄達朗さんは著名人にも高く評価された職人だった。高校卒業後、将来を決めかねていた奥田さんを家業に誘ったのも達朗さんだった。兄の後を継いだことを誇りに感じており、「塗り物で俺のところよりいいものはない、くらいに思っている」。  朝起きて仕事に打ち込み、夜に安らぐ場所だった。「一番大切」と語る潰れてしまった2階には、輪島塗の製品がしまってある。階段は崩れ、様子を見ることすらできない。  今は1階で懐中電灯の明かりを頼りに過ごし、夜は横付けした軽トラックで眠る日々だ。外に出るのは避難所で食事を取るぐらい。奥田さんは「この家に『さいなら』と言うのは一番楽だけど、取り壊されるところは見届けたい。自分がいなくなるわけにはいかない」と語る。 建物倒壊、応急危険度判定で4割「危険」  石川県は被災した建物の倒壊危険度を調べる「応急危険度判定」で、対象建物の4割にあたる1万2615棟を「危険」と判断した。この割合は過去の大地震と比べても高い。古い木造住宅が多く、耐震化が進んでいなかったことも背景にあるとみられる。  山あいにあり、一時は孤立状態になった輪島市町野町の広江地区。川端登喜子さん(71)の木造2階建ての自宅も「危険」と判定された。窓が外れて隙間(すきま)風が入り、雨漏りもしているが、8畳余りの部屋で夫喬(たかし)さん(77)と暮らす。「地震があると家がきしんで怖い。でも、避難所は人がたくさんいるので主人も私も苦手です」と話した。  「自宅にいる方が安心。避難所で感染症にかかりたくないし、人に迷惑をかけたくない」。木造3階建ての店舗兼住宅が危険とされている珠洲市飯田町の男性もストーブや湯たんぽで寒さをしのぐ。  石川県内の各地の避難所には約8000人が身を寄せる一方、壊れた家屋に住み続けている人らが相当数に上るとされ、県は無料通信などを使って実態把握に努めている。  輪島市は県が集めた情報を活用し、行政サービスの案内などを提供する方針だ。珠洲市では保健師らが地域を巡回し、個人情報や健康状態を確認するようにしている。市の担当者は「将来に向けたサポートのため、居場所の把握は重要だ」と話す。