ここあみるくのブログ

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食品スーパーに見えない衛生問題 万博を控える大阪府

日常生活に欠かせない食品スーパー。生鮮食品のショーケースには多数の冷却装置があるが、その内部にほこりがたまるといった衛生管理の不備が問題視されている。日本の「食」の魅力を世界にPRできる2025年大阪・関西万博を踏まえ、大阪府が食品衛生対策として、全国でも異例の実態調査と啓発を開始。ただ、店側の負担も大きく、改善を義務付けるなどの関連法令がないのが実情で、関係者は苦慮している。 長期間清掃されず、ほこりがつまって衛生状態が悪化したハニカム ■カビ菌も検出 「これはひどい」。食品流通の業務改善コンサルタント「アールエスディジャパン」(大阪市)の和田英昭社長(68)は昨年10月、顧客店舗の冷却装置の内部を見て驚いた。同席した男性店長は「お恥ずかしい限りです」と頭を垂れた。 冷却装置には、冷気を整流してつくるエアカーテンに必要な「ハニカム」と呼ばれる部品がある。ほこりがたまりやすいため、製造業者は半年から1年に1度の清掃を推奨しているが、和田氏によると、部品が汚れで黒ずむまで放置されるケースが多いという。 ハニカムの汚れは深刻で、和田氏が大阪産業技術研究所(大阪府和泉市)に店舗から回収したハニカムの汚染度調査を依頼した結果、カビ菌などが大量に検出されたという。すぐに人体に影響があるわけではないが、汚れの程度によっては深刻になりかねない。 和田氏は「一見清潔な食品売り場には不衛生のかけらも見られないが、見えない汚れがあることを認識しなければならない」と指摘する。 ■ネックは手間とコスト 店舗側がハニカムのメンテナンスに二の足を踏む理由は手間とコストだ。 幅約180センチの冷蔵ショーケースには4つのハニカムが付けられているのが一般的だが、清掃作業には3人がかりで約1時間もかかる。閉店後の夜間に作業するには負担が大きい。 清掃を外注するにもハードルは高い。標準的な店舗に置かれている冷蔵ショーケースは50~60台あり、約80万円の経費がかかる。 「なんとかした方がいいのは分かっているが…」と、ため息を漏らすのは関西を中心に展開するスーパーの50代の男性店長。ハニカムの清掃のためには陳列した商品の一時的な撤去も必要だ。 かつては定休日に清掃を行った時期もあったが、店舗間の競争激化で定休日もなくなり手が回らないのが実情という。店員で対処するには時間外での手当も必要になる。「お客さんの目に触れにくいからどうしても後回しになる」と男性店長は本音を漏らす。 ■現状はお願いベース スーパーのハニカムの衛生問題について、府に情報提供があったのは昨年11月。府議会でも取り上げられ、府は一部スーパーの立ち入り検査など実態調査に乗り出し、ハニカムの定期的な清掃を促すチラシの配布を保健所や業界団体を通じて始めた。 府がこうした迅速な対応をしている背景には、2年後に迫る2025年大阪・関西万博があるからだ。約2800万人を超える想定入場者に対し、大阪は「食」を前面に出して迎え入れるだけに、食品衛生に関して万全で臨まなければならない。 ただ、担当者を悩ませているのは改善を促すための根拠となる法令がないことだ。揚げ物などの調理や魚や肉を切り分けるのであれば食品衛生法で対処を義務付けられるが、ハニカム清掃はあくまでも推奨にとどまる。 府は今後適用できる条例などを制定することも視野に入れているが、担当者は「現状は『よろしくお願いします』というのがベース。少しずつ状況を改善していくしかない」